2015年1月8日
ポール・クレイグ・ロバーツ
フランスの風刺誌シャルリー・エブドへのテロ攻撃とされるものの見方には二つある。
一つは、英語世界では、あるいはその大半では、風刺は“ヘイト・スピーチ”と見なされ、風刺作家達は逮捕されていただろう。しかし、フランスでは、イスラム教徒は特権を持つ対象から除外されており、風刺に腹を立て、報復したのだ。
イスラム教徒が一体なぜ思い悩むことがあろう? そろそろ、イスラム教徒達は、欧米の偽善と二重基準に慣れるべきだろう。イスラム教徒が、他の少数派が享受している保護を受けられないことを怒っているのは疑いようがないが、一体なぜ、何十万人もが亡くなった、ワシントンの対イスラム戦争にフランスが参加したことでなく、風刺に報復するのだろう? 殺害されることの方が、風刺されるより遥かに深刻ではないのだろうか?
襲撃に対するもう一つの見方は、攻撃は、ワシントンに対するフランスの属国状態を強化することを狙って仕組まれたとするものだ。容疑者は、有罪であり、同時にカモでもあり得る。これまでFBIがでっちあげた全てのテロ策謀が、アメリカ人にとり、テロの脅威を現実のものとするのに役立っていることを想起願いたい。http://reason.com/blog/2014/07/22/human-rights-watch-all-of-the-high-profi
フランスは、ワシントンがロシアに課した経済制裁で苦しんでいる。フランスの対ワシントン属国状態ゆえに、ロシアの注文を引き渡すことができずに、造船所が影響を受け、ワシントンが、NATO傀儡諸国に、ロシアに対して課するよう強いた経済制裁のおかげで、フランス経済の他の面も悪影響を受けている。
今週、フランス大統領はロシアに対する経済制裁は終えるべきだと述べた(ドイツ副首相もそう言った)。
これは、ワシントンにとっては、フランス外交政策独立の行き過ぎだ。第二次大戦後の時期、CIAによるヨーロッパ人に対する爆弾攻撃で、ワシントンが共産主義者に罪をなすり付け、ヨーロッパの選挙で、共産主義者の影響力を破壊するのに利用した“グラディオ作戦”をワシントンは復活させたのだろうか? グラディオ作戦のテロ攻撃の背後には、共産主義者がいると、世界中が信じ込まされたのと同様、フランスの風刺雑誌襲撃では、イスラム教徒が罪をなすりつけられている。
ローマの疑問は常に、誰の利益になるのかだ。今回の答えは、フランスでなく、イスラム教徒でなく、アメリカの世界覇権だ。アメリカの世界に対する覇権こそ、CIAが奉じているものだ。アメリカの世界覇権は、ネオコンが押しつけているアメリカ外交政策だ。
ナショナル・パブリック・ラジオによれば、シャルリー・エブドは言論の自由の問題だ。アメリカには言論の自由があるが、テロリストがフランスから言論の自由を奪ってしまったのだとNPRの評論家連中は主張する。
しかし、ライズンと彼の情報源が、アメリカ憲法と内部告発者保護で護られているという事実にもかかわらず、ニューヨーク・タイムズ記者のジェームズ・ライズンが情報源を自白するよう心理的拷問にかけられたアメリカに、一体どうして言論の自由があるだろう。明らかに、アメリカでは“国家安全保障”が、ありとあらゆるものをしのぐのだ。
“国家安全保障”は国家安全保障とは何の関係もない。アメリカ政府内部の犯罪人連中を、連中の犯罪に対する説明責任から守ることにしか関係はない。ワシントンが“国家安全保障”という言葉を使うのを聞くたびに、政府がまた次の犯罪をやらかしたという100%の事実がわかる。国家安全保障は、ワシントンの犯罪活動の言い訳なのだ。“国家安全保障”という言葉は、政府の犯罪が明るみに出るのを防ぎ、それにより、政府を説明責任から守るのだ。
ボストン・マラソン爆撃犯とされるジョハール・ツァルナーエフ裁判で、“国家安全保障”という言葉が演じる役割には驚嘆する。ツァルナーエフは、2013年4月以来拘留されており、2013年4月22日以来起訴されている。ところが、陪審員の選出は、ようやく2015年1月に始まるところだ。一体なぜこれほど遅れるのだろう? 目撃者がおり、自白もあると政府が主張する爆発に加えて、ありとあらゆる容疑で、 ツァルナーエフ兄弟は、既にマスコミで、有罪にされているのに、迅速な裁判の保証などもはや何の意味もなく、延々遅れているのは謎だ。ところが、我々はジョハール・ツァルナーエフ自身の主張をまだ聞いていないのだ。彼を条件付けし、自分の罪を認めるようにさせながら、代替メディアが指摘した多くの質問が忘れ去られるようにする為に、ジョハールの裁判が引き延ばされているのだという考え方を押しやるのは困難だ。
印刷メディアも、TVメディアも、政府説明を、調査もせずに垂れ流している。ところが、代替メディア、この件のあらゆる側面に、大いに異議を申し立ててくれている。クリントン政権以来、アメリカ政府が、アメリカ国民に教えてくれた通り、政府が言うことは悉くウソだとするのが、一番確実な前提だ。
出来事で、一番怪しい点は、様々な地方自治体からの警官や、軍服を着た州兵で構成される10,000人の重武装した兵士の軍隊や、戦車や装甲兵員輸送車が、ボストンの街路に出現した素早さだ。捜索の為に、本格的兵器を装備した、これほど大規模な部隊が動員されたことなど、これまで皆無だった。まして、一人の負傷した武器をもたない19歳の青年の為に。
それ程の部隊をこれほど迅速に集め、配備したことは、事前計画をうかがわせる。たった一人の大怪我をした容疑者の捜索とされていたものは、むしろアメリカ最大の都市の一つを封鎖し、容疑者とされる者を取り押さえる上で、何の貢献もなかった、兵士達の分隊による、銃をつきつけて、アメリカ国民を自宅から追い出し、無差別家宅捜索を行う、最初の試みであり、前例であるように思える。どこかの家が、医療手当てをしない為、死にかけている、酷く負傷した非武装の逃亡者を匿っていた可能性などゼロだ。
ボストンとその郊外が封鎖されただけでなく、アメリカ連邦航空局は、ボストン上空の空域を封鎖し、ローガン空港に“飛行禁止命令”を出した。一体なぜだろう?
マサチューセッツ州の他のいくつかの都市や他の州までもがその警察部隊を警戒態勢にした。一体なぜだろう?
現場には、FBI、アルコール・タバコ・火器及び爆発物取り締まり局、CIA、麻薬取り締まり局、国家テロ対策センター担当者がいた。アメリカ司法長官は、司法省のあらゆる資源を投入すると約束した。一体なぜだろう?
唯一もっともらしく思われる答えは、ボストン封鎖と、市民の家への警察による侵入を大衆に受容させるようにすべく、恐怖レベルを高める為のものだ。酷く負傷した非武装の19歳の青年による危険が、そのような出費や、憲法上の国民の権利蹂躙を正当化できるなどとは考えにくい。
騙されやすくない人は、爆発は、主要都市封鎖での、州、地方、連邦政府連携が目的で画策された出来事だったのではあるまいかと疑うべきだ。昨年7月のボストン住民世論調査では、42パーセントが、出来事に関する公式説明に疑念を抱いていたことがわかった。http://www.globalresearch.ca/four-in-ten-bostonians-skeptical-of-official-marathon-bombing-account/5390848
騙されやすい連中は、もし陰謀が存在しているなら、誰かが話しているはずだと必ず言う。だが人々は語っている。ただそれが全く効果がないだけだ。例えば、ジョージ・W・ブッシュの一期目に、NSAの内部告発者が、ニューヨーク・タイムズに、NSAが外国諜報活動偵察法を無視し、裁判所令状無しに、アメリカ国民をスパイしていることを密告した。アメリカ法の下では、NSAは、ブッシュ政権と共謀し、深刻な重罪を犯していたことになる(恐らくは、脅迫目的で)が、ニューヨーク・タイムズは、ジョージ・W・ブッシュが再選され、政権が事後に重罪を合法化する余裕ができるまで、この話を一年間没にしていた。
グラディオ作戦は、イタリア大統領が暴露するまで何十年も秘密にされた謀略だった。
ノースウッド・プロジェクトは、第二次ケネディ委員会が明らかにする何年も後まで秘密にされていた。
百人以上の緊急救援隊員や警官や消防士が、ワールド・トレード・センター・ツイン・タワーの階ごとに、そして地下2階でさえ、複数の爆発を聞き、個人的に経験したと報告しているのに、こうした証言には全く何の影響力もないのだ。
NISTのWTC 7崩壊説明を論破するには高校の物理学教師一人で十分だった。このビルが制御解体によって倒壊されたことを決定的に証明した事実は、公式説明に対して何の効果もない。
9/11委員会の共同議長で弁護士だった人物が、本を刊行し、その中で、彼らは委員会から情報を与えられなかった、アメリカ軍が委員会にウソをついたと言い、委員会は“失敗すべく立ち上げられた”と述べている。議会も、マスコミも、アメリカ国民も、一体なぜ情報は与えられなかったのか、軍は一体なぜウソをついたのか、そして一体なぜ、委員会が失敗すべく立ち上げられたのかを調べようという関心が全くなかったのだ。公式調査の指導者による、こうした異常な発言が、何の効果もないのだ。
現在でさえ、アメリカ国民の大半は、ロシアがウクライナに侵略して、いくつかの州を併合したというワシントンのプロパガンダを信じている。判断も、諜報情報も、アメリカ国民や陪審員の強みではない。
政府は、アメリカ国民に、何であれ政府がまとめた筋書きを語って、大衆の騙されやすさを笑い飛ばしているのだ。
現在アメリカ国民は“大手マスコミ”に頼る人々と、代替インターネット・メディアに頼る人々に分かれている。一体何が本当に起きているのかに関する手掛かりをつかんでいるのは後者だけだ。
シャルリー・エブドとツァルナーエフ兄弟に関する物語は、事実ではなく、政府の権益に基づくものになるだろう。これまで同様、政府の利益が、事実に打ち勝つのだ。
記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2015/01/08/charlie-hebdo-tsarnaevs-trial-qui-bono/
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文中にあるグラディオ作戦については、下記記事を翻訳してある。御参考に。
大衆を国家に頼らせるべく、無辜の民間人、女性、子供を攻撃せよ<グラディオ作戦>
電気洗脳箱、エセノミクス氏地元の英雄と周辺名士の番組を持ち上げる為、ありとあらゆる手を尽くしている。
- 大河ドラマ番組そのもの
- タレントによる地方訪問
- 朝番組での登場するイケメン全員集合
- 主人公の母親役登場の昼番組
- 松陰を巡る学者先生の番組
録画で見た、学者先生の番組では「独立不羈」というキーワードが使われていた。
独立不羈の出典、原文はこういうもののようだ。
独立不羈三千年の大日本、一朝人の羈縛を受くること、血性ある者視るに忍ぶべけんや。
現代日本語にすれば、以下の様な大意だろう。
三○○○年間、独立を守り、外国の支配を受けたことのない日本が、突然外国に支配されてしまうのを、血気盛んな人が見て耐えられるだろうか?
つまり、先生方や、番組制作者の皆様、一見回りくどいが、
かつて長年独立していた日本が、70年も外国に支配されたままでいるのを、健全な常識ある政治家、見ていて耐えられるだろうか?
と、独立を主張する松陰をたてながら、ひたすら売国行為に走るのは、方向が逆だ。尊敬していることにならないではないか、と言いたかったのだろうか?
それなら、実に素晴らしいことだ。
パリ事件、『悪魔の詩』翻訳者殺人事件を連想する方もおられるようだ。
小生にとっては、連想する事件名がやや違う。
『悪魔の詩』彼の日本語訳が出る前、たまたまロンドンにでかけた。中心部の大型書店で探したが見つからない。書名をいうと、こわごわカウンターの後ろから出して、売ってくれた。買ってきたものの、あまりの厚さに、読まないまま行方不明。
個人的に『中東ハンパが日本を滅ぼす―アラブは要るが、アブラは要らぬ』殺人事件。
事件の前、湾岸戦争問題から、日本の政治を論じる、彼のこの本を偶然読んだ。
理不尽な宗主国の恫喝など無視すべき。金も、軍隊も出してはならない。という主張。
冒頭に、『悪魔の詩』翻訳本刊行後にあったいやがらせなど些細だが、湾岸戦争をめぐる政府の醜態さに怒り心頭であることが書かれていた。思い起こせば、現在のアラブ敵視策を根本的に批判していた、ように思う。
事件が起きた時、当然、その本の話題が出るものと思っていた。
記憶している限り、不思議なことに、その本に触れた大本営広報部皆無だった。きつねにつままれたような気分だった。探偵もののテレビ番組や、推理小説では、被害者の一番最近の行動から調べて行く。『悪魔の詩』の話だけして、最新の本に触れない理由、個人的にいまもって謎だ。
古書をゆっくり読み返したいが、ネットを探しても、巨大書店からしか買えそうも無い。価格は決して高くないものの、トレースされるのがいやで買わずにいる。名著、どうして復刊されないのだろう。