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トルコはなぜS-400を運用しないのか?

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2021年7月25日
ウラジーミル・オディンツォフ
New Eastern Outlook

 我々が知っているように、2017年にロシアとトルコは、モスクワがアンカラにS-400地対空ミサイルシステムを供給する契約書に署名した。2019年10月23日、ロスオボロンエクスポルトは、ロシアが、ミサイルを含め、トルコにS-400システムの全ての要素を供給し、予定に先行してこの契約を遂行し、トルコが契約に完全に支払ったと報じた。結果として、トルコは、アメリカ言ったより安く、技術的にもより先進的なS-400防空システムの4砲兵隊25億ドルで入手して、ロシアから、このシステムを買った最初のNATO加盟国だった。

 以前エルドアンは、2020年4月に、トルコはS-400地対空ミサイルシステムを採用すると述べていた。S-400の出荷以来、数百人のトルコ専門家が既にロシアの基地で再訓練された。彼らは自国で、更なる研修を行い、実験に参加した。

 だが、S-400のトルコへの出荷から、ほぼ2年過ぎたが、アンカラは実験した標的を発表していない。観察者が見たのは、ミサイル発射で、標的への命中ではなかった。トルコは、これら状況にコメントしていないが、それは既に様々な憶測をひき起こした。

 S-400システムは(極超音速のものを含め)あらゆる近代的、先進的航空宇宙兵器を破壊するよう設計されており、2007年、ロシアでの運用に採用された。このシステムは、最高4.8km/sで飛行し、5メートルという低い高度で飛行する目標や、巡航ミサイル、戦術航空機、戦略航空機、弾頭搭載した弾道ミサイルを含め最大射程400キロの標的を射止めることができる。早期発見レーダーの観測範囲は最高600キロだ。S-400地対空ミサイル・システムは現段階において、世界で最も先進的で、効果的と見なされている。

 前世代のロシアのS-300地対空ミサイル・システムは世界中で運用されている。とりわけ、中国、イラン、シリアとベネズエラが彼らを入手し、ギリシャやブルガリアやスロバキアのようなNATO加盟諸国の兵器庫にもある。トルコ軍については、現在ロシアのS-400のみならず、BTR-80装甲兵員輸送車、Mi-17ヘリコプター、対戦車ミサイル・システムや種々の小火器を導入している。更に、ロシアとトルコはロシア兵器をトルコ戦艦に統合するため協力しており、アンカラは新しい反応システムや、APCや対戦車システムに興味を持っている。

 ロシアからS-400を購入するアンカラの決定は、アメリカ合州国とNATO全般の激しい反感を引き起こした。ほぼ三年間、トルコに、ロシア地対空ミサイル・システムを断念させようとするのをアメリカは、やめなかった。トルコはこの圧力に屈せず、S-400を放棄しなかったため、ワシントンは最初に「大問題」でアンカラを威嚇し、トルコをNATOから追放すると恫喝し、100機のF-35供給を拒否し、第5世代戦闘爆撃機F-35製造のアメリカ計画からアンカラを除外した。2020年12月、ワシントンは制裁を強化した。

 制裁に加えて、いくつか非常に変わった考えもあった。一年前、Defense Newsが報じたように、ジョン・スーン上院議員はトルコからロシアのS-400を(国防総省予算で)買うよう提案した。取り引き金額は100億ドルと見積もられた。加えて、この上院議員は、こういう条件を示した。トルコは、この代金を、NATOの必要条件に適合しない軍装備品購入に使わないと約束しなければならない。これは、トルコが軍装備品と兵器で、アメリカにのみを依存すると保証することを意味する。アンカラは軍事や技術政策決定をやめて、その決定をホワイトハウスと国防総省に任せるのだ。

 他方ワシントン・ポストが報じた通り、一年前ドナルド・トランプ大統領は、ロシアのS-400地対空ミサイルシステム購入のかどでの制裁を解決するため、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領に1000億ドルの貿易協定と「回避策」を申し出た。

 だが、わずか数カ月前、アンカラが、S-400トリウンフをワシントンに売ることに同意したという一部の欧米メディア報道があった。例えば、2020年末、ギリシャの新聞ペンタポスタグマは、トルコ軍技術者が、アメリカの圧力の下「ロシアから購入した地対空ミサイル・システムの敵・味方識別」をプログラムしなおそうとしたと主張した。これら声明には裏付けがない。

 トルコ軍当局高官と技術専門家が、自身のロシア地対空ミサイル・システム類似品を開発するため、トルコ軍に配備された地対空のミサイルシステムS-400トリウンフの一つを積極的に調査したという報道もあった。だが、世界最高のミサイル発射装置の極端な秘密性や、多くの革新的設計や、技術的に複雑な解決策のため、トルコ軍当局はロシア設計をコピーできなかった。トルコはこの状況についてコメントしておらず、S-400分解についての情報は非公式だ。

 概して、S-400装置の不正ハッキングに関する限り、この選択肢は、ほとんど考慮する価値がない。トルコに供給されたS-400は、誰かが電子的な重要部分に入ろうとすると、複雑な装置が故障し、ロシア人専門家なしで修理できないよう設計されている。この場合、最もわかりやすい防衛線がある。法律上のものだ。契約書に署名する際、購入者側には非常に厳しい要求があった。具体的には、トルコは装置を分解したり、変更したり、それを維持したりする権利がないのだ。もしロシアの専門家がシステムの違法変更を検出すれば、ロシアはこれらのシステムを取り戻すか、機能停止させる権利があり、それはS-400を金属の塊に変えてしまう。

 もちろん、ロシアから外国が購入した軍装備品に不法アクセスする試みは、以前にも分かっているが、類推で、このようなシステムを作るのは、ほとんど不可能だ。かつて中国は、ロシアのトール・ミサイル・システムを購入し、それは、ほぼ百パーセント効果的だが、書類では移転されない多くのノウハウがあるため、同じものを作り出すことはできなかった。それから中国はロシアからS-300の最初の改作を受け取った。それは中国で「分解され」、コピーされ、中国は自身のものを作った。率直に言って、劣っていた。その後彼らは非常に重大なレベルに修正しようとしたが、全く効果はなく、中国はロシアでS-300PMU2システムを買い始めた。ちなみに、それもコピーされたが、中国版はロシア仕様の70%しか満たせなかった。

 ロシアのS-300とS-400地対空ミサイルシステム用レーダーは、長年アメリカ軍情報部にとって興味ある主要部分だ。それらの機能の秘密を明らかにする目的で、このようなシステムの搭載機材の一部、ソ連時代に開発されたレーダーと発射装置S-300PTが、ウクライナから密かに輸出さえされた。だが、これさえ国防総省には役に立たなかった。同時に、異なるバージョンのF-16戦闘機からステルスF-35まで、あらゆるタイプの航空機が、ロシアの地対空ミサイルシステムの観測画面で大変良く見える。

 S-400レーダーとミサイルを「粉砕する」ため、アメリカはパレスチナのアイアン・ドームに似た作戦を考えた。一ダースの巡航ミサイルで発射台を「砲撃する」のだ。だが軍の監査役が、各攻撃の経費を計算した時、ワシントンでスキャンダルになった。大隊の一つのS-400を破壊するには5000-6000万ドル費用がかかり、攻撃装置で、少なくとも戦闘機一機が撃墜されると、経費は1億ドルに急上昇する。それで、この考えは即座に放棄された。おおまかな見積もりによれば、アメリカはS-400の「対抗手段」を造り出すため約200億ドル使った。それでもロシア航空防衛体制の仮想破壊さえ実現に成功していない。

 トルコ自身の国家安全保障の関心については、時に、NATO加盟国ということだけで、直接対決を押しとどめているギリシャという年来の仇敵がいることを忘れてはならない。同時に、ギリシャは比較的強い軍があり、航空防衛はロシア製のステラ、オサーAKM、Tor-M2とS-300システムに基づいている。アンカラは、このような敵と自信を持って対決するためには、兵器の品質で大きな優位が必要で、それは第5世代戦闘機F-35と、最も近代的なS-400地対空ミサイルシステムを使うことで実現するはずだった。だから、ロシアとのS-400契約を危うくするのは、明らかにアンカラの利益にならない。

 そして、これは、S-400地対空ミサイルシステムの二番目のセットをロシアから買うというアンカラの意志表明で確認できる。その供給プロジェクトは、既にロスオボロンエクスポルトが準備しにている。

 だから、トルコが既に購入したS-400を、なぜ稼働していないのかの説明は実に退屈だ。稼働はコロナ流行のため延期されたのだ。結局、これは単純なものではなく、トルコ、ロシア両国専門家の立ち会いが必要なのだ。

 ウラジーミル・オディンツォフは政治評論家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/07/25/why-isnt-turkey-putting-the-s-400-into-service/

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 数日前、東京新聞で『水よ踊れ』書評を読んだ。香港の大学への日本人交換留学生が主人公。香港には何度か出張したこともあり早速購入。巧みな構成で、様々な国の興味深い人々が登場する。読み始めたら止まらなかった。

 今日の孫崎氏のメルマガ題名

各種世論調査で菅内閣支持率は、「危険水域」といわれる30%近い。最早「菅 義偉」は自民党にとり負の財産。日経「内閣支持率から自民党の政党支持率を引いた“首相プレミアム”、安倍政権はおおむねプラス10-20の範囲を推移。菅政権は7月に̠マイナス4」

 連日の五輪呆導にうんざりしているが期待の映画が公開されるので拝見予定。あの「新聞記者」のプロデューサーによる映画だ。政治に興味ない芸術学部の学生に試写会で見せたところ、見た後「選挙に行きます」と答えたという、たのもしい映画。Twitterに投稿しても掲載されないという。ケイトリン・ジョンストンさんが指摘している通りだ。

 日本外国特派員協会での7/30公開の映画「パンケーキを毒見する」エグゼクティブプロデューサー・監督会見

2021.7.28 日本外国特派員協会主催 映画「パンケーキを毒見する」エグゼクティブプロデューサー 河村光傭氏 監督 内山雄人氏 会見

 今日の東京新聞朝刊 文化娯楽面にも記事がある。

笑いで菅首相を斬る
河村光庸プロデューサーに聞く
あす公開「パンケーキを毒見する」

 日刊IWJガイド

 東京は今コミック『AKIRA』(大伴克洋作)の世界に突入! 閉会式直前に東京都の重症者病床使用率は100%を超える!? 東京都の新規感染者が3177人と3000人突破! 全国の新規感染者は過去最高を1000人以上上回る9576人! 責任主体の5者は、その責任を取るどころか、都民・国民に丸投げ!

 下記のIWJ配信を拝聴予定。

【撮り下ろし初配信・IWJ_YouTube Live】20:00~
又吉栄喜・大城貞俊 新刊出版記念対談「書くこと・読むことの楽しさ-沖縄文学の可能性を求めて-」
視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/featured


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