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金正日の死は、隣国にとってではなく、北朝鮮にとっての危機

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Stephen Gowans

2011年12月20日

gowans.wordpress.com

今週、北朝鮮の指導者金正日が死亡した後、何が起きているのかを理解するために、踏まえておくべきいくつかの事実がある。

#1. 北朝鮮に対するアメリカ外交政策は、常に、アメリカに支配された韓国への北朝鮮併合のお膳立てをするため、後者の崩壊を強いることを目指すものであり[1]、しかも、平壌が核兵器開発を始めるまで、非常にうまくいっていた。北朝鮮に対するアメリカによる敵意は、決して核兵器に関するものではなかった。それどころか、北朝鮮の核兵器は、アメリカによる敵意の結果なのだ。ワシントンが、誤って北朝鮮マルクス-レーニン主義体制と呼んでいるものを終わらせる(マルクス-レーニン主義は、自立、北朝鮮の非市場体制と、北朝鮮の自律的経済発展という国産の教義、チュチェ(主体)イデオロギーに置き換えられた)という、今や70年目になる、アメリカによる敵意こそが、これまでずっと存在し続けているものなのだ[2]。これらのどれ一つも、北朝鮮を犠牲にして、アメリカが利益を挙げる自由裁量には不十分なため、北は解体対象として選び出されているわけだ。

#2. 1993年、アメリカ合州国が、戦略核ミサイルの一部を、旧ソ連から北朝鮮へと標的変更したと発表した後、北朝鮮は、ようやく核兵器入手を狙い始めた。それ以来、北朝鮮は、核能力を、かろうじて幼稚園レベルまでに開発できたにすぎない。[3] 北が2006年と2009年に実験したプルトニウム爆弾は、広島爆発の威力のわずか十分の一しか生み出せなかった。ミサイルの先端に装着できるよう弾頭を小型化したという証拠はない。しかも、北朝鮮のミサイル計画は色々な問題に悩まされてきた。[4]

#3. 北朝鮮は、軍事的に取るに足らない代物であり、軍要員の多くは農業に配置されている。北朝鮮の敵対者達、アメリカ合州国、韓国と日本の軍事予算と、兵器の精巧さが、北朝鮮のそれに対して、高くそびえている。もしペンタゴン予算が身長206cmのバスケット・ボール選手マジック・ジョンソンだとすれば、北朝鮮の軍事予算は2.5cmで、小さなネズミの身長程度のものだ。韓国の軍事予算は11.4cm、日本の軍事予算は9.9cmで、北朝鮮より何層倍も大きい。[5]

#4. ネズミが、バスケットボールのコートで、マジック・ジョンソンを打ち負かせないのと同様、北朝鮮は、アメリカ合州国に、挑発をしかけるような軍事的影響力を持っていない。北には、南の同胞に対し、内戦をしかけて、勝利する能力もない。北朝鮮は攻撃的脅威ではないのだ。“オバマの分析では”ニューヨーク・タイムズ記者 デーヴィッド・サンガーは書いている。“北は、ミサイルと核実験を連発し世界から守ろうとして、大統領の最高戦略中で繰り返されている‘守りの姿勢’にひきこもっている…絶えず飢餓にひんしており、軍隊は金欠でパイロットの訓練すらできない北は、アジアにおける大国になろうなどという幻想を抱いてはいない。北の主要目的は生き残りだ。” [6]

#5. アメリカ合州国は、北朝鮮と比べれば、軍事的な巨人であり、韓国と日本には、より装備の優れた軍隊があり、この三国は、支障なく、北への挑発をしかけ、防衛支出による国庫枯渇を平壌に強いて、北朝鮮を危機に陥れ、ことによっては崩壊させるというアメリカの狙いの実現に近づけることができる。一方、北朝鮮の支配政党労働党は、店じまいをして、韓国管理のもとで再開しろ、という要求に屈する以外のいかなる犠牲を払ってでも、対立は避けたいのだ。

#6. 挑発は、だから、全て反対側からのものだ。アメリカ合州国が、北朝鮮を戦略核ミサイルの標的にすることや、ペンタゴンは、北朝鮮を豆炭にしてしまうことができる、という元米国務長官コリン・パウエルの警告より挑発的なものは、ほとんどあるまい[7]。ワシントンが率いる、60年に及ぶ、対北朝鮮経済戦争も、同様に、挑発的であり、北朝鮮窮乏化の主因なのだ。何万人ものアメリカ軍兵士が北朝鮮の南部国境沿いに配備されており、アメリカの戦艦と核ミサイルを搭載した潜水艦が北の領海周辺をはいかいしており、アメリカの戦闘機が北の空域を脅かしている。平壌は、単に、北朝鮮の先軍(軍優先)政策の立案者にすぎない。ワシントンこそが究極の計画立案者なのだ。最後に、アメリカと韓国の軍隊は、定期的に作戦演習を実施しているが、その一つである乙支(ウルチ)フリーダム・ガーディアンというものは、北朝鮮侵略演習だ。一体誰が誰を挑発しているのだろう?

#7. 韓国の児童書の中で、文字通り、角と牙が生えた赤い悪魔として描かれている、最近亡くなった北朝鮮指導者金正日は[8]、自国民を飢えさせているとして、西欧マスコミでも同様に、悪魔のように描かれている。食糧不足で、北朝鮮が苦しんでいるというのは真実だ。だが、金を中傷する死亡記事は、何故北朝鮮が飢えているのかについては触れていない。答えは経済制裁だ。[9] アメリカ外交政策は、第一次世界大戦における対ドイツ連合軍の作戦同様、敵を飢えさせ、降伏させるというものだ。明白な理由から、これは広く認知されていない。第一に、そうすれば、自らの狙い達成に至るため、アメリカ外交政策が覚悟している、非人道的なほど長期間の制裁が暴露されてしまうからだ。そして、第二に、北朝鮮の飢餓を、有効な経済モデルとしての国有・中央指令型経済への信頼を失墜させるために活用しなければならないからだ。北朝鮮の人々が飢えているのは、社会主義が機能しないからだと反共産主義神話は言う。北朝鮮の人々が飢えているという事実の真相は、ワシントンがそうさせているためなのだ。最近では、金正日の息子、金正恩が後を継いだので、食糧援助を送るわけにはゆかないという口実の類の、いやになるほど沢山の奇妙な言い訳で、人道主義団体による、アメリカ合州国は食糧援助を送れという呼びかけが無視されているのも驚くべきことではない。[10]ええっ? 食糧援助が送られなかった本当の理由は、援助がアメリカ外交政策と矛盾するからなのだ。アメリカ合州国は、かつて、50万人のイラクの子供達の死で“あがなうに値する”と考えていた。[11] アメリカの指導者連中は、経済制裁による飢餓でもたらされる、同じ人数の北朝鮮人の死も、あがなうに値すると考えるだろう。

#8. 金正日の死はアメリカ外交政策にとっての恩恵となる可能性がある。指導部内での混乱や、内部抗争が、目標の一致をほころばせる結果になる可能性がある。外部の脅威に集中するかわりに、継承のことで頭がいっぱいの指導部分裂。もしそうであれば、これは、アメリカ合州国と韓国の視点からすれば、北朝鮮が崩壊に陥る可能性がある重要な瞬間だ。そこで、この時点で、一体誰が挑発をすると、読者はお考えになるだろう。平壌? それともワシントンとソウル? 順調な時でさえ、平壌は戦闘避けたがっていた。この極めて危機的な岐路において、北は絶対に戦闘を避ける必要がある。だが計算は、略奪者にとっては逆方向に機能する。今こそ、北朝鮮が略奪に最も弱くなっている時なのだ。

#9. 略奪者は、自分達自身が狩人であることは決して認めない。彼らはいつも、自分達は、危険な世界の複数の脅威に対して、自らの安全を守ろうとしているものとして描き出している。狡猾さや抜け目のなさで、ネズミも、マジック・ジョンソンの裏をかき、一度か二度はシュートをきめられるかも知れないのだ。そこでアメリカ合州国、韓国と日本は、北朝鮮が、韓国の哨戒艦天安沈没(それに対する北朝鮮関与の証拠は、ばかばかしい程希薄だ[12])のような、次ぎの“挑発”や、あるいは次ぎの延坪島連続砲撃(これは、国際慣習法の下、北朝鮮に属する係争水域に、韓国が先に迫撃砲を撃ち込み、韓国が引き起こしたものだ)をしかけた場合に備え、厳戒態勢をとっていると言われている。[13]

だが、これまで見てきた様に、北朝鮮側が始める挑発というシナリオが展開すると期待するのは理にかなわない。何故、アメリカ、韓国と日本の軍隊が厳戒態勢にあるのかということの最も適切な説明は、三国が、万一条件が好都合になれば、軍事的に介入する準備をしている可能性があるので、今こそ、平壌に対する圧力を強化するのに理想的なタイミングだということだ。

注:(5と11のみ訳した)

1. New York Times reporter David Sanger (“What ‘engagement’ with Iran and North Korea means,” The New York Times, June 17, 2009) notes that “American presidents have been certain they could … speed (North Korea’s) collapse, since the armistice that ended the Korean War in 1953.” At the same time, Korea expert Selig S. Harrison has written that “South Korea is once again seeking the collapse of the North and its absorption by the South.” (“What Seoul should do despite the Cheonan”, The Hankyoreh, May 14, 2010.)

2. According to Dianne E. Rennack, (“North Korea: Economic sanctions”, Congressional Research Service, October 17, 2006) many US sanctions have been imposed on North Korea for reasons listed as either “communism”, “non-market economy” or “communism and market disruption.”

3. In an article on Newt Gingrich’s fantasies about North Korea or Iran setting off a nuclear device far above US territory in order to unleash an electromagnetic pulse attack, New York Times’ reporter William J. Broad cites a US military expert who characterizes “the nations in question (as being) at the kindergarten stage of developing nuclear arms.” (“Among Gingrich’s passions, a doomsday vision”, The New York Times, December 11, 2011.)

4. Keith Johnson, “Pyongyang neighbors worry over nuclear arms”, The Wall Street Journal, December 20, 2011

5. 年間軍事予算(単位10億ドル): アメリカ合州国、700; 北朝鮮、10; 韓国、39; 日本、34。ペンタゴン予算を除いて、年間軍事支出は、それぞれの国のGDPに、CIAの推計と、CIAのWorld Factbookでの報告による、GDPのパーセンテージとしての軍事支出をかけて、推計した。ペンタゴンの軍事予算の情報源は、トム・シャンカーとエリザベス・バミラー、“Weighing Pentagon cuts, Panetta faces deep pressures”, The New York Times, November 6, 2011.

6. David Sanger, “What ‘engagement’ with Iran and North Korea means,” The New York Times, June 17, 2009.

7. “Colin Powell said we would…turn North Korea into a ‘charcoal briquette,’ I mean that’s the way we talk to North Korea, even though the mainstream media doesn’t pay attention to that kind of talk. A charcoal briquette.” Bruce Cumings, “Latest North Korean provocations stem from missed US opportunities for demilitarizaton,” Democracy Now!, May 29, 2009.

8. David E. Sanger, “A ruler who turned North Korea into a nuclear state”, The New York Times, December 18, 2011.

9. See Stephen Gowans, “Amnesty International botches blame for North Korea’s crumbling healthcare”, What’s Left, July 20, 2010. http://gowans.wordpress.com/2010/07/20/amnesty-international-botches-blame-for-north-korea%E2%80%99s-crumbling-healthcare/

10. Evan Ramstad and Jay Solomon, “Dictator’s death stokes fears”, The Wall Street Journal, December 20, 2011.

11. 経済制裁で、五歳未満の500,000人のイラクの子供達が亡くなったという国連推計について質問されて、当時の米国務長官マデレーヌ・オルブライトは、恥ずかしくもこう答えた。“大変難しい選択だと私は思いますが、あがなうに値すると思います。” 60 Minutes、1996年5月12日. http://www.youtube.com/watch?v=FbIX1CP9qr4 2011年6月19日検索。

12. See Tim Beal’s Crisis in Korea: American, China and the Risk of War. Pluto Press. 2011.

13. See Stephen Gowans, “US Ultimately to Blame for Korean Skirmishes in Yellow Sea”, What’s Left, December 5, 2010. http://gowans.wordpress.com/2010/12/05/us-ultimately-to-blame-for-korean-skirmishes-in-yellow-sea/

記事原文のurl:gowans.wordpress.com/2011/12/20/kim-jong-ils-death-is-a-danger-for-north-korea-not-its-neighbors/

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アメリカ、北朝鮮があればこそ、その脅威を理由に、韓国・日本、両国の属国状態を維持できるのだから、北朝鮮を崩壊させるわけなどないだろう。こっそり、てこ入れしていて不思議はない。もちろん、生かさぬよう、殺さぬよう。

元米国務長官マデレーヌ・オルブライト女史はチェコ、プラハ生まれ。元の名はマリエ・ヤナ・コルベロヴァー。1950年にアメリカ移住。コルベロヴァー、コルベルの(娘)という意味。

ジョージタウン大学でソ連外交を教えた時の教え子に河野太郎衆議院議員がいる。

父のジョーゼフ・コルベル(ヨゼフ・コルベル)Josef Korbel は、教育家・外交官であり、コンドリーザ・ライスのデンバー大学時代の恩師である。

とWikiPediaにある。

この一行で、河野太郎衆議院議員の発言を信じるのを、やめたくなった。

宗主国のご意向通り、対中国戦争で、醜の御楯となるべく、東北大震災や、我々が生きている間に収束できるはずのない原発災害なども加わった財政破綻の中、開発途上のステルスを大量購入し、中国包囲網と日本搾取の一石二鳥政策、TPPという仕組みに、飛んで火にいる冬のどじょう。

  • 6万人?集まった東京・明治公園の反原発集会翌日、講読している新聞には小さな囲み記事が掲載された。反原発集会には、宗主国からの支援は一切ない。
  • 8万人?集まったモスクワでの反プーチン集会翌日、講読している新聞には巨大な写真と記事が掲載された。反プーチン集会に外部支援があるのは明らか。たとえば、GlobalResearch記事。Russia's Elections. Who is Calling the Shots at the Duma?

日本の新聞には、北朝鮮の新聞と異なり、「政府を批判する自由」、間違いなくある。

もちろん、北朝鮮・中国・ロシア「政府を批判する自由」であるのは、御承知の通り。宗主国や自国政府は、間違っても、批判対象にはならない。

宗主国は、1%の支配層ために、帝国主義を推進し、属国は、その1%の傀儡支配層ために、宗主国の御下命を推進する。いずれにおいても、99%は餌食に過ぎない。

以下の記事も、興味深い。

2011年12月25日 本澤二郎の「日本の風景」(940)
屈米・松下政経塾政権の対中外交

ざまぁみやがれい!
八ッ場ダムを作ると僕らの税金が東京電力に入る仕組みになっている アーサー・ビナード


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